パーティでのHerb & Dorothy夫妻・・・キックスターターを終えて

先週の土曜日は、イーストビレッジで開いた、
キックスターター・キャンペーンの
カウントダウンを見届け、達成を祝うパーティに
ハーブ&ドロシーも参加してくれた。ドロシーは、
パーティ直前に食べたシェパードパイにあたって
お腹をこわし、到着直後にトイレへ駆け込むという
ハプニングがあったものの、結局最後の
カウントダウンまで付き合ってくれた。
ハーブの妹さんのポーラやアーティスト、
友達も大勢駆けつけてくれた。ハーブは、口数も少なく、
ドロシーの横で静かに座っていた。最近の二人は、
ごくごく静かな毎日なので、久しぶりに
大勢が集まる場に連れてくるのが心配だったが、
二人とも楽しんでくれたようだ。

しかし、この2ヶ月は、
精神的にも身体的にも実にしんどい毎日だった。
おかげさまで、9月初めにスタートした60日間の
キックスターター・キャンペーンは、世界各国から
集まった730人のサポーターに支えられて、
目標額の$55,000をクリアし、
最終的にはその158%、 $87,331の資金が集まった。

週に一度ニュースレターを送り(最後の週は、3回発送)、
4つのフェイスブックアカウント、ツイッター、
タンブラーで常にメッセージを発信、ほぼ毎日
キャンペーンブログを更新、アート関係のブロガーに
呼びかけ、マスコミにプレスリリースを送り、
ハガキやフライヤーをギャラリーや映画館に置いてもらい、
50X50の美術館全てに協力要請のメールを何度も送る。
そして電話やメールでの連日のフォロー、
ミーティング・・・まるで選挙運動のようだ。
資金集めは、筋トレと同じで、最初はつらかったけれど、
そのうち資金援助をためらわずに口に出せる「筋肉」がついた。

この間、他の事はほとんど手がつかなかった。
ひたすら頭を下げて「サポートして下さい」と嘆願する日々。
新しくサポーターが増えるとキックスターターから
メールが入るので、どこにいて何をしていても、
メールが気になって仕方がない。ある日はサポーターが
沢山増えたと言ってはよろこび、翌日は全然ダメだ、
と言っては落ち込む。

一番つらかったのは、数字がほとんど動かない中盤戦。
横ばい状態が続き、1ヶ月経過した中間地点でやっと40%、
残り3週間地点で、50%。スタッフの士気もだんだん下がり、
イライラと緊張感が頂点に達して、チームワークがぐらつき始める。
「メグミさん、一体どうするんですか?!何か戦略は?」
と詰め寄られる日々。

そう、たかがファンドレイジングなのだ。
でも、このキックスターターの面白いところは、こうやって、
周囲の人全てをハラハラどきどきさせて、巻き込んでしまうところだ。
目標額をたて、期日を決める。それまでにお金が集まらないと
すべてを失う。このシンプルで明快なルールがあるからこそ、
資金集めという苦痛極まりない作業が、ある種のゲーム感覚で
楽しめてしまう。それが、キックスターターがここまで
広まった理由でもあると思う。

気の毒なことに、ドロシーもこのゲームに
巻き込まれてしまった一人だ。最後の1ヶ月は、
朝起きてすぐにマックブックに直行し、キックスターターの
サイトをチェックする。気になって、1日に最低5回は
サイトを見ていたらしい。絶望的な声で
「目標額に達成するのはムリじゃない?」という電話が
何度かかかってきた。一斉メールを何度も送って、
サポートをよびかけてくれたり、ハガキをいつもバッグに
入れて持ち歩き、 アパートの廊下で、スーパーのレジの列で、
病院の待合い室で、会う人、会う人に、
ハガキを渡して宣伝してくれた。

そして、キックスターター・サイトのサポーターリストを見て、
あの人が寄附してくれた、この人はまだだわ、と私たち以上に
一喜一憂していた。ありがたいとともに、情けない。
こんなことに巻き込んでしまって申し訳ない気持ちで一杯だった。

終了15日前、シアトルに住むサポーターの呼びかけが、
思わぬはずみをつけた。
「サポーターのみなさん、さあ,支援額を2倍に増やして、
この映画が完成できるよう応援しましょう!」と。
そして、多くの人がつぎつぎと支援額を2倍、3倍に
増やしてくれた。中には、$500を$1,000に増やしてくれる人もいた。

しかし、その効果はそんなに長くは続かなかった。
残り8日、目標額まで、まだ2万ドルも足りない。
私にとっての最後の頼みの綱は、日本の知り合いだった。
このキャンペーンは、まずアメリカで成功させなくては、
と最後の最後まで残しておいた切り札。それは、この1年間で
『ハーブ&ドロシー』日本公開にあたって
お世話になった500人の方々への呼びかけ。
もうダメだ、と断念して一斉メールを送ったのが最終日の8日前だった。

翌日、メールボックスを空けると、日本からの
多くのご支援とともに、去年『ハーブ&ドロシー』の企業スポンサーに
なって下さったハイパーギア社の本田社長から、
スゴいメッセージが届いていた。
「ぜひ、会社でご支援したく思います。2万ドルサポートすれば、
目標達成できますよね・・・・99.9%は佐々木監督をはじめとする、
スタッフとサポーターの方々の努力と熱意と多分、汗と涙でしょう。
でもそこまでして物をつくる、世の中に出していくという喜びに、
あと、0.1%お手伝いできるだけで、実現を一緒に喜べるというのは、
これくらい嬉しいことはありません。」

本田さんからの高額のご支援は、言葉に言い尽くせないほど
ありがたいものだ。しかし、本田さんから頂いたこのメッセージは、
プライスレスだ。深い感動とともに、脱帽させられた。
本田さんの言葉には、
21世紀の新しいアート支援—クラウドファンディングの真髄がある
と思った。こういう気持ちで皆がそれぞれ可能な範囲で
アーティスト支援に参加すれば、世界はアートと愛と感謝で
一杯になるだろう。今回サポートしてくれた730人の方々も、
こういう気持ちで参加して下さったのかと思うと、とても謙虚な
気持ちになった。そして、私自身もキックスターターで、
いくつかのプロジェクトのサポーターになった。

翌日から続々と届いた日本からの寄付のおかげで、
目標額はあっという間にクリアし、その後も支援は続いた。
そして『ハーブ&ドロシー50X50』は、
キックスターターで成功した1万以上あるプロジェクトの中の
上位1%、また映画部門では、上位17位にランクされた。

大変だったけれど、とても貴重な経験をさせていただいた。
製作資金の調達だけではなく、支援とは何か、
支援されるには何が必要で、どのような責任を伴うのかを教えられた。

みなさんの大切な1ドル1ドル、そして夢と期待に紡がれて、
この続編は一体どんな映画になるのだろう。楽しみであると同時に、
大きなプレッシャーを感じる。とにかく、がんばらなくては、です。
これからギアチェンジをして、再び製作現場に戻ります。

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