カナダでまさかの人種差別?!トロント空港の移民局で

先日、ドロシーと一緒にカナダのトロントへ行ってきた。小さいけれど、
良質のアート系ドキュメンタリー映画を見せるステキな映画祭
「Reel Art Film Festival」のオープニングに招待されてのこと。

そこで新作「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」のハイライト
(およそ40分)を上映。ワールド・プレミア前で全編上映できないので、
抜粋シーンだけしか見せられないにも関わらず、
映画祭のオープニング映画として紹介された。

ドロシーにとって、飛行機で旅行するのは4年ぶり。
しかも、ハーブが亡くなってから、1人での海外旅行は初めてだった。
なので、2泊3日の旅、NYから飛行機でわずか1時間半の距離なのに、
すごく緊張していた。

NYとトロントの空港で車椅子を手配する。
空港内の長距離を歩くには、高齢のドロシーにはキツすぎる。
車椅子にだと、特別扱いで、セキュリティも移民局も列に並ばず、
優先的に手続きを済ませてくれるので便利。
ところが、トロントに到着して、カナダの入管手続きで
ちょっとしたトラブルがあった。

まずドロシーが先にパスポートを出す。少しやりとりした後、
私が前へ進んでパスポートを出したら、若いカナダ移民局の男性職員が、
じろじろと私とドロシーの顔を見比べて「あなたとこの人の関係は?どうやって2人は知り合ったのですか」と聞かれ、一瞬戸惑った。

2人の関係?
どうやって説明すればいいのだろう。

でも、ウソをついて後でややこしいことになると困るので、正直に答える。「私はドキュメンタリー映画監督で、彼女は私の映画の主人公なのです。
映画の撮影で10年ほど前に知り合いました。」

すると、その移民局の担当者の目が点になり
「君ね、態度悪いんだよ。後ろに下がって!」と怒られる。
「はっ?」一体何が起きているのかわからない。
「態度が悪いって、どういう・・・」と反論も許されない。
「いいから後ろに下がって!」

私がアジア人で、ドロシーが車椅子に乗っている白人の高齢者なので、
きっと私は介護人か何かだと思ったのだろう。

映画監督?ドロシーが主人公??
それは、きっとその移民局の男性の想像の枠を
あまりに越えていたのかも知れない。

何を言っても埒が開かず、「君たちは移民局行き」と言われ、
通関のカードに何やら一杯書き込みをされて、
私とドロシーはとぼとぼと移民局に「送還」された。

移民局のオフィスに着くなり、金髪の女性職員がでてきて、
今度は私の顔を見るなり開口一番に
「あなたの態度が悪いからここへ送られてきたの、わかる?」

やれやれ。一体どうしてこういうことになるのか、全く理解に苦しむ。
でも、ここで反論すると、何時間も拘束&尋問されることになる。
今まで訪れた世界各地の移民局での経験からすると、
悔しいけど、ここは黙っていた方がよさそうだ。

「カナダへ入国できるのは、privilege(特権)なのです。
我々は、あなた達を本国に返すこともできるし、
カナダに入れてあげることもできる。」

いや、別に私が自分で来たくて来たわけではなくて……。
という説明もさせてくれない。

「私たちは、映画祭に招待されてきたのよ。彼女が私の映画を作ったの」
と可愛い声で訴えるドロシーの声も、耳に入らない様子。

「この人と知り合ってどのくらいですか?」
ドロシー曰く「もうかれこれ10年。とても良い人なのよ」
こういう時のために、顔写真入の映画祭のプログラムを
持ってくるべきだった、と後悔した。

私は、もうNYに帰るゾ、という気分になっていたのだけれど、
結局、パスポートにスタンプが押され、入国を認められた。

一緒にいた空港職員は、
「私は何も言える立場にないから口を挟まなかったけど、
いや本当に悪いことしたね。
これでカナダの滞在が台無しにならないことを祈りますよ。」と
優しい言葉をかけてくれた。それで少しは気分が晴れたけど、
今思い出しても、あからさまな「悪意」のKOパンチを
真正面からぶつけられた気がして、かなりへこんだ。

恐らく「人種差別」とは、こういう事なのだろう。
私はNYに長年住んで、ここまであからさまな差別にあったことが
なかったので、面食らった。
カナダは、アメリカと違って移民政策に寛大だし、
アメリカよりずっとフレンドリーな国だと思っていたのに、
カナダに対する印象がすっかり悪くなってしまった。

出だしはまずかったけれど、映画祭の方は
オープニング・パーティと上映会に300人近い人が来てくれて大盛況。
ハイライト上映にも関わらず、大好評をいただいた。

ドロシーと一緒に、地元のメディアに沢山取材されて、
空いてる時間に、パワープラント(という美術館)、
オンタリオ美術館を見に行き、美味しい食事を行く先々で振る舞われる。
大満足の3日間だった。

 

 

 

 

 

 

来週火曜日は、いよいよNYのホイットニー美術館にてワールド・プレミア。 今日は、新宿ピカデリーにて、3月26日の

ジャパン・プレミアの打合せをしてきた。

580人収容の巨大シアターでの上映会。
私のアパートのリビングくらいある大きさのスクリーン!
ここにハーブ&ドロシーの姿がどんな風に映し出されるのか。
今から楽しみだ。

3月30日の劇場公開へ向けて、準備は着々と進んでいる。

3 thoughts on “カナダでまさかの人種差別?!トロント空港の移民局で

  1. はじめまして。

    2日程前、深夜にハーブ&ドロシーが放送されており、何となく観てみたのですが、最高に心が刺激され、今もまだ心が躍っており、アレコレと検索しているうちにこのブログを発見し、コメントしたくなってしまいました。

    僕はアートの事はよくわからず、専門的知識もなく、直感?でしか見れないので、どこが気に入ったのと聞かれても答えられない感じです。

    日本の画家だと佐伯祐三さん、アメリカだとバスキアなどと好きな人はいますが理由は説明できません。

    その程度の僕ですが、この映画、しかも、途中から見たのにも関わらず、アート心がガンガンに刺激されました。

    アートを見たい!!!

    アートを紹介する番組がありますが、ああいった番組はアートを知ってほしいとか面白さを伝えたいという思いがあると思います。

    ハーブ&ドロシーはそんな番組を何年見ても感じない感覚を短時間でドカン!と僕に与えました。

    VOGEL 50×50というサイトを発見し、すぐに掲載されている作品たちをダウンロードしちゃいました。

    ヴォーゲル・コレクションの本を出版してほしいくらいです。

    この映画を見て得た刺激、興奮、僕はどう説明していいのかわからないのですが、一つだけハッキリしているのは、この気持ちをくれたヴォーゲル夫妻、そして監督への感謝を感じていることです。

    素晴らしい作品をありがとうございました!

    素晴らしい感覚をくださり、ありがとうございました!

    ではでは、長々と衝動的コメントで失礼致しました。

    PS:DVD、購入させていただきます。

    • ホーリーさん
      こんにちわ。随分前に、こんなステキなコメントを残して下さっていたのに、返信もせずごめんなさい。何しろ、このブログサイトの扱いにまだ全然慣れてないのです。

      アートでもそうですし、音楽や小説、映画もそうですが、「なぜ好き?」と聞かれても理路整然と説明なんてつかないですよね。映画の中で、ドロシーが言ってるように「ある男性が自分にとってなぜ魅力あるのか、はっきりした理由を言えないのと同じ」と言ってますけど、まさにその通り。

      アートを巡る映画も書籍も、その辺を無理して「解説」しようとするので、どうしても敷居が高くなってしまうのではないでしょうか。

      そんな事をこの映画を通じて伝えたかったので、ホーリーさんのメッセージを拝見して感激しました。なぜかわからなくてもいいんです。ストレートに「好き(あるいは嫌い)」と感じる心を持つことが大事だと思います。

      佐々木芽生

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