NYという街の魅力&魔力

「NYは、一言で言うとどんな街ですか?」と先日ある人に聞かれた。何も考えず口をついて出て来た回答が「世界最高の街です。」

NYに済んで25年。思えばNYと私は、まさにLOVE & HATE「愛憎関係」の繰り返しだった。それでも、私が今でもここを離れられない、NYという街の魅力は何だろう?

NYは、世界中のモノ、ヒト、食、文化、宗教•••すべてがぎゅうっと凝縮された小宇宙。最高のものから最低のものまで、全てそろっているしどんな人でもフィットできる場所がある。そして、その間をわりと簡単に行ったり来たりすることもできる。ここで生活していると、誰もが、自分らしく生きるように、と励まされる。

ちょっと油断すると盗まれ、騙され、裏切られる。人々の憎しみがあからさまにぶつかりあう。先日、ラッシュ・アワーの電車の中で、黒人の太ったおばさん同士が、「あんた、私のケツにいま触った?!」「触るわけないだろ、このブス!」と大声で叫びながらののしり合いの喧嘩をしているのを見て、ああ、こういう光景って世界中探してもNYだけだろうなあ、と悲しいやらおかしいやら。毎日が緊張の連続。でもそんな戦場のようなところに、エアポケットのようなやさしさがあって、ほっとする。バスに乗っていて誰かが後ろの出口から降りようとしてる時にバスが発進すると、「OPEN THE DOOR!」(扉をあけてやれよ!)の大合唱が乗客から起きる。出張から帰って大きなスーツケースをタクシーから下ろして途方にくれていると、通りすがりの黒人のお兄さんが「NEED HELP?」(手伝おうか?)と言ってスーツケースをアパ―トの階段の上まで運んでくれる。道を歩いていると、しょっちゅう知らない人に声をかけられる。「そのハンドバッグ、どこで買ったの?」「そのスカーフ素敵ね」「そのマニキュアの色珍しいわね」などなど。ある日、考え事をして歩いていたら、よっぽどむっつりしていたのか通りすがりの男の人に「SMILE!!」と言われて、大笑いしてしまった。

男同士/女同士が手をつないで歩いても、80歳過ぎたおばあさんが胸の大きく開いたショッキングピンクのひらひらのドレスを着ても、あるいはそういうドレスを男が着ていても、雨も降ってないのに真っ黒い巨大雨傘をさして歩いても、まあ、それもありだよね、ってことでとやかく言う人はいない。よくNYに観光で来ている外国人から「道を聞かれてびっくりした!でも、何だか嬉しかった」という声を聞く。到着したその日から、誰でもニューヨーカーになれる。NYには、そんな懐の深さがある。世界中の人種がこのまちで、思い思いの夢や恨みを抱き、毎日生きのびるために、なりふり構わず必死だ。そんなエネルギーが刺激的でたまらない。

最初にNYに着いた頃、よく初対面の人に「What do you do?」(あなたは、一体何をする人なの?)と聞かれたのには戸惑った。その頃、私はインドの長旅から日本への帰国途中で、友だちの家に居候して適当にNYに暮らしながら、生活費を稼げる程度の仕事をしよう、くらいにしか思っていなかったから。でも、NYに住んでWhat Do You Do?の質問が繰り返されるうちに、いやでも「自分は誰?」「これから私は何をするの?」「私の人生はこれからどうなるの?」と問い続けられた。

振り返ると、私はその問いにいつも追いかけられて、つねにゴールを定め、やりたいことを探し、やるべきことをチェックし、前に進んで来た気がする。もしNYに住んでなかったら、私は、決して映画を撮ろうなんて、思わなかっただろう。

私がハーブ&ドロシーに出会い、映画を撮る気になり、そして完成できたのも、NYという口うるさいステージママがいてくれたからだと思う。意地悪く、時に残酷、でもおせっかいで、正直で実は心根はやさしいおっかさんのようなNYという街が、頑張れ頑張れと背中を押し続けてくれた。

今日、快晴の空の下に輝いてるNYをブルックリン側から見て考えた。私がいつかNYを出て行く日は、来るのだろうか?80歳になった時、このまちのエネルギーに耐えていけるんだろうか。もし日本に帰って、TVのニュースか何かで、今見ているNYの景色が映し出されたら、どんな気持ちになるだろう? 「おばあちゃんはねえ、昔あの魔法にかかったようなまちに住んでたんだよ」なんて、子供たちに言って聞かせてる自分の姿。

ほろりと涙がこぼれそうになったけど、思い直して地下鉄に乗ってマンハッタンへ向かった。ま、もうしばらくは、この厳しいおっかさんの懐でガマンして、修行を続けるとしよう。

One thought on “NYという街の魅力&魔力

  1. 初めまして。突然のコメント失礼いたします。
    私はニューヨークに来てやっと10カ月が経とうとしているところです。

    「私は誰なのか。」その問いに追いかけられる気持ち、とても共感したためコメントをせずにはいられませんでした。
    ニューヨークは自分と戦い続けることを求めてきます。なんのアドバイスもなく。

    文章を読んで、なぜか涙がでました、ありがとうございます。
    これからも頑張ります。

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