コスタビはコン・アーティストか?

一昨日、アーティストのマーク・コスタビをインタビューした。

私がNYに来たばかりの1980年代終わり、コスタビは時代の寵児とばかりに、アンディー・ウオーホールと写真にツーショットで収まったりして、メディアを賑わしていた。私も、当時雑誌の取材の仕事をしていた頃、一度だけ彼をインタビューした事がある。(どんなインタビューだったかは、全然覚えていないけれど)日本でも、かなり知名度があり、人気もあったと記憶している。

あれから25年後の今、彼の名前がメディアに出る事はほとんどない。それどころか、彼の評判はがた落ち。何年か前に、Con Artist- Rise and Fall of Mark Kostabi (ペテン師アーティスト マーク・コスタビの成功と凋落)なんていうドキュメンタリー映画が作られたほど。(プロデユーサーは、知合いのペリー・グラヴィンだったこともあって、よく覚えている)

彼の評価が落ちたきっかけは、アシスタントを大勢やとってアートを「大量生産」し、アートをビジネスにして儲けるぞ!みたいなことを公言したからだ。100ドル札で身体中をカバーした写真が雑誌に載ったりして(本物の100ドル札を700枚使ったとか)、随分アート界の神経を逆撫ですることになった。とにかく、有名になるためには、なりふり構わない、みたいな姿勢が下品に思われたのか、そのうち彼の名前は、全く聞かなくなった。

その経緯はある程度知ってたので、50X50の取材をして、ハーブ&ドロシーのコレクションのリストにコスタビの名前を発見した時には、本当に驚いた。ええ、あのハーブ&ドロシーのコレクションに悪評高きコスタビの作品が?しかも76点も?!でも、良く見ると全ての作品は80年代半ばに描かれたドローイングで、コスタビ曰く二人が買ったのは全て「アシスタントを雇う前に、彼が自分で描いた」作品とのこと。ドロシーに聞いたら「アシスタントを雇って創作するのは、ミケランジェロだって、ジェフ・クーンズだってやってるわよ。全然気にならない」とのこと。彼の作品は、楽しくて、ユーモアに溢れてるところを、ドロシーはとても気に入っている。

昨日訪れたコスタビのチェルシーのスタジオでは、今も大勢のアシスタントが、せっせと絵を書き、絵を大量生産していた。一時は、日本からの需要が多かったけれど、バブル崩壊後はぱたりと注文が途絶え、今はもっぱらイタリアからの注文が多いという。(コスタビは、1年の半分をローマで過ごしている)

50歳を過ぎた彼は、少々中年太り気味で、派手なストライプのシャツや、プラチナや、赤や緑に染めていた80年代の頃の華やかさはない。何を聞いても、率直に答えてくれるし、自分を良く見せようとか、そんな素振りも一切ない。今、個人も企業も、自分達のイメージを傷つけないようにとやっきに取材コントロールしているのに、彼の正直で開けっぴろげな態度には、とても好感が持てた。映画「コン・アーティスト」についても、彼は「そういう見方もあるということで」と言って気にしている風でもなく、今も堂々とFAME IS LOVE、「名声は愛」と断言している。

私自信も、彼に会う前は、世間と同じ色眼鏡で見ていた。ハーブ&ドロシーは、どんなアーティストでも、決して批判、非難しない。世間の評判とは関係なく、「アーティスト」という人種を愛し、尊敬し、純粋に作品だけを見つめてコレクションした。コスタビを取材してみて、誰にも惑わされず自分でアーティストやアート作品を評価することの難しさを思う。それには、ハーブ&ドロシーのように、相当の自信と信念ががなければできないと改めて実感した。

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