ホリデームードに包まれて

2週間半の日本滞在を終え、NYに戻って10日が発つ。
私の不在中、NYでは120年ぶりの最大規模の台風サンディの上陸とその被害、
大停電、地下鉄全線運行停止、ハロウイーン・パレード&NYシティ・マラソン
(ニューヨーカーのアイデンティティとも言える大事な行事)の中止、
大統領選挙、そしてダメ押しの吹雪など、とんでもない騒ぎが相次いだ。

一体NYはどうなってるんだろう、と不安だったけれど、市内は意外と
何もなかったように全てが平常通り機能している(ように見える)。
NYに戻ってみたら共和党のロムニーが当選! なんて事態になってなくて
本当によかった、ギリギリだったけどオバマが再選してほっとしたね、と
友人のジャーナリストに話したら「いや、実はオバマは結構大差で
最初から勝っていたけど、接戦で負けるかもしれない、というドラマを
演出していたんだよ」!? との返事にびっくり。

確かに、オバマは前回の選挙ともに、民主党候補としては最多の票を
獲得して当選を果たした。危機感を煽って膨大な選挙資金を集め、
有権者を投票所へ送りこむ、という作戦。

投票権がない私でさえ、まんまとはまって毎月$10をオバマの選挙事務所に
寄付していた。オバマの当選をささえたのは、女性とマイノリティ人種。
選挙事務所のボランティアが、選挙当日に一軒一軒有権者のドアをノックし
「投票して下さいね~」と呼びかけて廻ったのも大きかったようだ。

アメリカに来て、最初の頃、いつも不思議に思っていた。
なぜアメリカの大学では「政治学」(Politics)ではなくて、
「政治科学」(Political Science)を教えるのか、と。

つまり、すぐれた「政治」を教えるのではなく「どうすれば選挙に勝てるのか」
という「科学」を教える、ということなのだ。
当選のための戦略に長けていれば誰でも政治家になれる。
だから、ブッシュのような大統領が当選して、さらに再選までできてしまうという
恐ろしい事態になる。

でも裏を返せば、有色人種で富裕層の出身でもないオバマのような人物が
大統領になれるのも、こうした「科学」のおかげなのかも知れない。

***

今週木曜日は感謝祭の祝日で、アメリカはホリデームードに包まれている
というのに、NYのハーブ&ドロシー本部は、今最高に忙しい時期を迎えている。

明日からの2週間で、映画の全ての要素、映像、編集、音楽、グラフィックス、を
最終決定してピクチャー・ロックしなくてはならないからだ。

私は、明日木曜から週末一杯、編集のバーナディンの家へ泊まり込み、
そこでターキーを食べて感謝祭をお祝いしながら、ガリガリ編集作業をし、
グラフィックを修正して入れ込み、
オリジナル音楽のメロディなどを微調整しなくてはならない。

そして追撮もまだ残っている。
私が日本に行ってる間に、ナショナル・ギャラリーのスタッフが来て、
ハーブ&ドロシーのアパートから、作品を全て引き上げてしまったのだ!

そのシーンを何とか撮影したくて、
NGAと強行に交渉を続けたが実現しなかった(涙)
なので、ドロシーのアパートへ行って
作品がなくなった白い壁を撮らなくてはならない。

来週は、モンクレア美術館へ行って、オープニング・ショットを追撮する。
スクールバスが美術館へ乗り付けるワイド、
そして子供たちがバスから降りてくる足下の画像の2ショットだけ。
子供たちが展覧会を見ているシーンは撮影済みだけれど、
その前の映像がどうしても足りないからだ。
わずか2カット、合計(おそらく)10秒以下の映像を撮影するためだけに、
ニュージャージー州まで行く。

映画の最終段階は、こうして1カット1カットを精査し、
ほんの少しでも映画のクオリティを上げて行く作業。
映画の全貌がもうすぐ目の前に現れる直前の時間。
この2週間は、実にエキサイティングであり、恐ろしい日々でもある